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短報

 

 

Levetiracetamにより症化する小児期発症流暢障害一例

                                                                                            

 

                                               Toshichan-man*

 

 

抄録

 levetiracetamで小児期発症流暢障害の軽症化が起こる症例を経験している。症例は20歳、男性、難発。近親に小児期発症流暢障害は居ない。最初、diazepam 2mg服用で重症化、1回の服用に終わる。paroxetineに変薬。2週間後に軽症化を自覚するもネットの情報に惑わされ服用拒否。levetiracetamに変薬。朝、levetiracetam 250mg服用し、夜まで軽度だが流暢障害が軽症化する。症例自身で服用する日と服用しない日を試す。levetiracetamを服用する日と服用しない日の差を強く認識し継続服用している。

 

 

key words

小児期発症流暢障害(Childhood-onset fluency disorder)薬物療法(Pharmacotherapy)、レベチラセタム(Levetiracetam) 、パロキセチン(Paroxetine

 

 

はじめに

 小児期発症流暢障害は人口の1%に存在するとされ、男性が女性より4倍多いとされる。

 親が小児期発症流暢障害であれば子供が小児期発症流暢障害となる確率は、親が小児期発症流暢障害でない場合の3倍とされる。 

 小児期発症流暢障害の原因は多岐に亘るとされ、遺伝的なものと遺伝的でないものに分けられる。遺伝的なものもその素因を受け継ぐのみという意見も強い。遺伝的でないものの原因の多くは出産時外傷とされる1)

 欧米では昔から小児期発症流暢障害を重大な疾患と見做し、盛んに治療が行われてきた。薬物療法はその一環である。数多くの薬物治療による報告が発表されている。小児期発症流暢障害に薬物療法が存在することは本邦に於いては余り知られていない。 

 小児期発症流暢障害は原因が多岐に亘るため、薬物療法の画一化は困難あるいは不可能とされてきた。ある人の小児期発症流暢障害には効果があっても、ある人の小児期発症流暢障害は却って悪化または不変なことが多くあった。

 アメリカで小児期発症流暢障害の治療薬として認可直前まで行ったpagocloneも効く人と効かない人に分かれ認可されなかった2)

 

 

 

 

症例

<症例>20男性、右利き。

性格 温厚、社会性高い。

家族 に小児期発症流暢障害はない。弟に中学1年頃よりチックあり。

既往 すべきもなし。

および生活歴 小学4年時に流暢障害に気付く本読みで第一語が出ない、自己紹介で流暢障害が出る、返事が出来ない、などで苦労する。高校卒流暢障害ため返事が出来なかった

 虐めなど余り受けずに大学へとネットで流暢障害に法が有ることを知り今まで脳波を撮ったことはない。

 日常会は比的普通に出来るが、難発となり第一語が出て来ないことが受けられたアルバイトで午前朝礼第一語が出て来ないことが時折あることが今一番みと言

 い不安と緊張から来る流暢障害と判断しdiazepam 2mgアルバイトなどへ行く前服用するよに処方するも明らかに流暢障害が重症化したと1回で服用中止

 paroxetine 投与症例は2週間後に流暢障害症化を自し喜ぶネット上に散在するparoxetine 副作用情より服用が怖くなったと言う

 筆者がparoxetineの代換えとして考えていたescitaropramの投与を提案するも、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)は服用したくないと投与に乗り気でない。

 levetiracetam 250mg(頓用)投与服用初日より流暢障害の多少の症化に付く翌日服用しなかったが今まで通り吃音することに付く服用する日と服用しない日をり返し明らかにlevetiracetam果あることを認識する。「levetiracetam時間は15時間ほど」空腹に服用すると食事を取ってから服用しても余りかないと分析している

 levetiracetamの副作用とされる易刺激性・攻撃性など精神症状は起こっていない。

 次回よりlevetiracetam 500mg(頓用)に増量予定。

 

考察

 levetiracetamは抗てんかん薬の作用のように流暢障害に効くとされ、paroxetineは抗うつ薬の作用のように流暢障害に効くとされる。

 症例は小学4年時に流暢障害に気付いているが、流暢障害は大部分がそれより若年のうちに発症する。連発が難発に変わったとき、流暢障害を自覚することが多いが、症例は流暢障害が小学4年時に連発が難発に変わったと考えられる1)

 薬物療法の報告は多岐に亘り、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)に限定しても多くの報告が発表されてある。sertoraline は小児期発症流暢障害を重症化させるとの報告が支配的3-6)であり、日本未発売のfluoxetineは小児期発症流暢障害を重症化させるという報告と軽症化させるという報告が一つずつある7,8)

 paroxetine小児期発症流暢障害軽症化の報告は多い1,9-11)二重盲法でparoxetine小児期発症流暢障害へ性を明した果も出ている1)paroxetineが小児期発症流暢障害に有効であることはほぼ立されていると考えても言ではないと思われる 

 levetiracetamの小児期発症流暢障害への効能の報告もあり、点頭てんかんの患者の小児期発症流暢障害に奏効するという報告12)、睡眠時脳波異常のある幼児の小児期発症流暢障害の多くに効能あるという報告13)が存在する。

 また、脳波異常のない成人男性の小児期発症流暢障害にlevetiracetamが奏効ではなく弱い効能であるが確実に効能あるという報告がある。その報告で効能機序は不明とされるが、ある大脳基底核の過活動を抑えるためと推測されている。また、この報告の症例のlevetiracetam服用量は2000mg/日まで1週間毎に500mg/日増やしての結果であり、少ない量より多い量の方が良く効いている14)

 小児期発症流暢障害の患者の苦悩は深い。虐めが流行っている現在、引きこもりに陥っている患者は本邦だけでも非常に多い。levetiracetamに小児期発症流暢障害が保険適用され、一割負担の制度が適用されると大きな朗報になる。

 

 

----今回、投稿にあたり、患者よりの同意を得ている----

 

COI:開示すべきCOI はない

 

 

 

文献

1) Busan P, Battaglini P, Borelli M, et al. : Investigating the efficacy of paroxetine in developmental stuttering. Clin Neuropharmacol  32 : 183-188, 2009

2) Maguire G, Franklin D, Vatakis NG, et al. : Expiratory Randomized Clinical Study of Pagoclone in Persistent Developmental Stuttering. J Clin Psychopharmacol 30 : 48-56, 2010

3) McCall W : Sertraline-induced stuttering. J Clin Psychiatry 55 : 316, 1994

4) Costa D, Kroll R : Sertraline in stuttering. J Clin Psychopharmacol 15 : 443-444, 1995

5) Christensen R, Byerly M, McElroy R : A case of sertraline-induced stuttering. J Clin Psychopharmacol 16 : 92-93, 1996

6) Brewerton T, Markowitz J, Keller S : Stuttering with sertraline. J Clin Psychiatry 57 : 90-91, 1996

7) Guthrie S, Grunhaus L : Fluoxetine-induced stuttering. J Clin Psychiatry 51 : 85, 1990

8) Kumar A, Balan S : Fluoxetine for persistent developmental stuttering. Clin Neuropharmacol 30 : 58-59, 2007

9) Murray MG, Newman RM : Paroxetine for treatment of obssesive-compulsive disorder and comorbid stutteringAm J Psychiatry  1541037, 1997

10) Schreiber S, Chaim G : Paroxetine for secondary stuttering: Further Interaction of Serotonin and Dopamine.  The Journal of Nervous & Mental Disease 185 : 465-467, 1997

11) Boldrini M, Rossi M, Placidi GF : Paroxetine efficacy in stuttering treatment. Int J Neuropsychopharmacol  6 : 311-312, 2003

12) Canevini MP, Chifari R, Piazzini A : Improvement of a patient with stuttering on levetiracetam. Neurology 59 : 1288, 2002

13) Ghazavi M, Rastgu F, Nassiri J, et al. : Efficacy of Levetiracetam in Treatment of Childhood Stuttering.  Int J Prev Med 11 : 159-160, 2020

14) Guillermo M, Antonio O, Juan Antonio B, et al. : Stuttering and levetiracetam: Case report and research proposal. Annnals of clinical psychiatry 30 : 68-69, 2018

 

 

 

 

 

*

A Case of Childhood-onset fluency disorder which is lessened by Levetiracetam

 

mmm82889@yahoo.co.jp