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ベンゾジアゼピン系抗不安薬および星状神経節ブロック療法が奏効する吃音の2例

 

 

                       Toshichan-man

 

 

 

抄録

 ベンゾジアゼピン系抗不安薬および星状神経節ブロック療法が一時的であるが劇的に吃音に奏効する症例を2例経験している。症例は中学1年および大学2年の男性である。2例とも、ベンゾジアゼピン系抗不安薬はその習慣性から中止。1例はescitaropram 10mg/日の服用は続けている。1例は星状神経節ブロック療法のみにて経過観察中である。吃音には様々な種類があり、強い不安と緊張から来る吃音が存在することを、この2例は示唆していると言える。

 

 

 

 

 

Key words

吃音(stuttering)、ベンゾジアゼピン系抗不安薬(benzodiazepine derivative)、星状神経節ブロック療法(therapy of stellate ganglion block)

 

 

はじめに

 ベンゾジアゼピン系抗不安薬および星状神経節ブロック療法が一時的であるが劇的に吃音に奏効する症例を2例経験した。2例とも吃音の根底に強い不安と緊張があることが推測された。それを解すことにより、吃音が軽症化することが推測された。

 こういうタイプの吃音の存在は欧米では古くより気付かれていたが、習慣性のあるベンゾジアゼピン系抗不安薬の投与は控える傾向が強く、また、欧米では星状神経節ブロックはほとんど行われることは無いため、これらの治療法は避けられ、欧米では吃音治療には用いられることは少なかった。

 

 

症例

症例1、中学1年、男性

既往歴:特記すべきことなし。

現病歴:心因性嘔吐が小学4年生時よりあり。嘔吐の度に母親が学校に呼び出され、家まで引き取ることを繰り返す。同じ頃、吃音が出現する。

 本院受診。escitaropram(レクサプロ)を投与開始。心因性嘔吐も吃音も少しずつ軽症化する。しかし、escitaropram(レクサプロ)の服用を中止すると再燃するを繰り返す。

 また、ベンゾジアゼピン系抗不安薬であるetizolam(デパス)が奏効することも知る。しかし、効能時間は数時間に限られることも知る。ネットより、ベンゾジアゼピン系抗不安薬の習慣性を知り、母親がetizolam(デパス)の服用を拒否する。

 筆者が星状神経節ブロック療法を行っているペインクリニックを紹介し受診。星状神経節ブロック療法を受ける。効果は劇的であった。週2回の星状神経節ブロック療法を受ける。現在は、薬の服用無く、全く元気に登校を続けている。

 星状神経節ブロック療法を中止すると再燃する傾向があるため、週2回の星状神経節ブロック療法を続けている。

 Escitaropram(レクサプロ)10mg/日の服用は続けている。

 

 

症例2,大学2年、男性

既往歴:特記すべきことなし。

現病歴:高校1年時に吃音に気付く。それより国語の時間に本を読まされるのが苦痛となり、登校拒否に陥る。しかし、高校は出席日数ギリギリで卒業する。

 大学生活が始まり、虐めを受け始める。本院受診。Escitaropram(レクサプロ)10mg/日の投与開始。次第に吃音が軽症化することを自覚。また、ベンゾジアゼピン系抗不安薬が数時間ながら奏効することも知る。

 しかし、症例は更に効果がある治療法を求める。星状神経節ブロック療法を行っているペインクリニックを紹介受診。効果は劇的で、吃音は星状神経節ブロック療法施行後、3日間程、完全寛解状態となる。しかし、3日間を過ぎると吃音が再燃状態になるため、週2回の星状神経節ブロック療法を続けている。

 Escitaropram(レクサプロ)は症例が性機能障害を嫌い、服用中止。ベンゾジアゼピン系抗不安薬は習慣性を考え、筆者が投与を中止する。

 

考察

 星状神経節ブロックは第2次世界大戦以前、その劇的効果から欧米でも広く行われていた。しかし、大きく長い注射針を用いていたことと第7頸椎横突起に注射針を置くようにされていたため、事故が時々起こり、死亡事故も起こっており、医療訴訟の盛んな欧米ではほとんど行われることがなくなった。

 しかし、昭和50年頃、若杉文吉が細く短い注射針を第7頸椎横突起に置く方法を開発し、安全性が飛躍的に高まり、日本に於いて広く行われるようになった。ペインクリニックで行われる治療の半分以上が星状神経節ブロック療法と言われる。

 

 

 

    星状神経節ブロックは極めて難治な戦争による心的外傷後ストレス障害に劇的効果があることより、アメリカで見直されてきた古くから存在する治療法である。日本で若杉文吉が安全な星状神経節ブロック療法を開発し、現在、日本では広く用いられている。

 欧米ではalprazolam(アルプラゾラム)が効果有る吃音が存在することが知られてきた。Alprazolam(アルプラゾラム)はその抗コリン作用から吃音を強く重症化させる。しかし、その抗不安作用が抗コリン作用に勝り、軽症化される種類の吃音が存在する。

 

 

文献

1)  Brady JP, Ali Z. : Alprazolam, citalopram, and clomipramine for stuttering. J Clin Psychopharmacol. 20, 2000.

2)  Schreiber S, Chaim G : Paroxetine for secondary stuttering: Further Interaction of Serotonin and Dopamine.  The Journal of Nervous & Mental Disease, 185 : 465-467, 1997.

3)  Moore DC. Stellate ganglion block. Springfield: Charles C Thomas; 1954. p.276.

4) Wakasugi Shikichi. Pain clinic (nerve block method). Tokyo: Medical school library; 1988. p.280.

5) Wakasugi Fumiyoshi. Adaptation of the stellate ganglion block. Pain Clinic 1991; 12: 171-8.

6) Wakasugi Shikichi. Pain clinic (diagnosis / treatment guide). Tokyo: Nippon Keizai Shimpo Company; 1994. p.312.

7)東澤知輝、河田圭二.パニック障害に対する星状神経節ブロックによる治療.ペインクリニック 1995;16:392-4.