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【原著】

 

ベンゾジアゼピン系薬剤が小児期発症流暢障害に奏功する自閉症スペクトラム障害の一例

                    

 

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【抄録】

 ベンゾジアゼピン系薬剤が小児期発症流暢障害に奏功する症例を経験した。症例は小児期発症流暢障害かつ自閉症スペクトラム障害であり、幼少期より軽症ながら吶音(言葉が辿々しい)、構音障害、そして小児期発症流暢障害があった。症例は大学時代に社交不安障害を併発。本院来院してからはベンゾジアゼピン系薬剤の多量処方を行ってきた。

 この症例のようにベンゾジアゼピン系薬剤が小児期発症流暢障害に強い効能を示す症例が潜在的に多く存在している可能性が考えられる。

 これは小児期発症流暢障害とは、脳波に異常が現れない大脳基底核を起点とする部分てんかん重延状態またはそれに似るものであることを暗示させる。また、心因性非てんかん発作またはそれに似るものである可能性も暗示させ得る。

 症例の小児期発症流暢障害はfluvoxamineの比較的大量長期服用により寛解している。

 

key words小児期発症流暢障害childhood-onset fluency disorder)、自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorderベンゾジアゼピン系薬剤(benzodiazepine derivatives)、部分てんかん(partial epilepsy)、心因性非てんかん発作(psychogenic non-epileptic seizure

 

【はじめに】

 小児期発症流暢障害は欧米では以前より重大な疾患として盛んに研究されてきた。家族集積性が高いことより、遺伝性の疾患と見做されてきた。小児期発症流暢障害は3歳から6歳までに発症し、幼少時期では5%に観察されるが、成人では1%に観察される32)。また、小児期以降は男性が女性より四倍多いとされる32)

 脳梗塞または極めて激しい頭部打撲などに依って成人に流暢性障害が起こることもある18,36)

 現在は、家系内多発例の研究より小児期発症流暢障害の遺伝子座の探索は急速に進んでいる。小児期発症流暢障害の遺伝子座は多くが発見されており12,28,29,31,32)、小児期発症流暢障害は多数の因子が原因となる一つの症候群とされる32)

 

【症例】(症例の生活歴に於いては若干の訂正を加え、匿名性に配慮してある)

(症例)52歳、男性、右利き(父・母・姉も右利き)

(家族歴)親兄弟及び近親に小児期発症流暢障害および、てんかんはない。

 父は高校生時代、学校に行かず遊び歩くため、極めて厳格であった祖父より大学病院精神科に連れて行かれ、人格障害と診断された(投薬はなし)。

 しかし、父も極めて強い凝り性であり、単に自閉症スペクトラム障害であった可能性も強い。なお、父は母には厳しかったが、症例は一度も父から怒られた記憶はない。

(性格)強い凝り性、神経質、優しい、努力家。

(既往歴)母24歳、父25歳時の子供であり、周産期に特記すべき事項はない。

 幼稚園の頃まで、非常に泣き虫で、毎日とくに夕方になると理由もなく数時間も泣き続けることがあった。また、幼稚園時、幼稚園のバスから降ろされてバス停から家までの極近い距離を歩くことが出来ず、いつもバス停で泣いていた。幼稚園は一年しか通ってないが、症例が登園を非常に嫌がったためか、風疹などが非常に長引き、十数回程、登園したのみである。

 発育は早く、小学校入学時、背の高さはクラスで一番高い方から2番目だった。

 小学生になると全く泣かなくなり、家から学校まで走って(小学1年生で15分ほど)登下校するようになる。対人関係は苦手で、友人の数は少なかった。小学1年の頃まで友人は一人も居なかった。小学2年次、親同士の仲介で同級生の友人が出来、学校が終わると毎日のように一緒に遊ぶようになった。その友人は極めて穏やかな性格であった。

 田舎であったためか、算数(数学)が極めて優秀であったためか、苛めを受けたことはない。

「夕方、頭がボーッとして現実感が薄くなること」および「夕食時、ボンヤリとして数分間から十分間、箸が止まること」が小学校低学年次、しばしば起こっていた。これらの発作は小学4年次か5年次を最後に起こらなくなった。

 驚きの反応が普通の人より非常に強く39)、また、恐がりで、小学生時は夜、トイレに行くことが非常に怖かった。涜神恐怖が小学生時より強くあった。

 運動時、力を抜くことが出来ず、そのため運動は苦手であった。小学3年次、走り方がぎこちないと揶揄され「ドッチンバッタン」とその走り方より、あだ名を付けられた。

 鍛錬は何もしていないが、小学3年次に上腕筋の力こぶが出来ることを知る。体脂肪が非常に少ないため、力こぶが目立ったとも考えられる。

 小学4年次、腹筋が非常に強く張っており、強く腹部を叩かれても大丈夫であることに気づく。また、誰もが出来る腹筋運動をほとんど出来ないことに気づく。しかし、これは余り気にせず、受診はしていない。

 小学4年5年次、走るときに顔を歪めて可笑しいと話題になった。

 発育が早く、身長の伸びは中学1年初めでほぼ終わり、中学1年次には50m走が学年(1学年男女で134人ほど)で一番速くなった時期もある。短距離走は速かったが長距離走は苦手だった。父も短距離走が速かった。

 中学2年次の前半、真夜中、金縛りが時折起こっていた。

 症例は交感神経を刺激することを行ったとき、すなわち、会社に着いたとき、昼食を食べたとき、運動をしたとき、風呂に入ったとき、などの40分ほどは非常に暑がるが、それ以降は寒がりとなる。褐色細胞腫を疑い病院へ行き血液検査したが「ドーパミンなどは少しも上昇していない、交感神経が非常に敏感と考えられる、褐色細胞腫ではない」と言われる。この病的な暑がりと寒がりは小学生の頃は余り記憶になく、高校2年次頃より顕著になったと記憶する。この病的な暑がりと寒がりは父にも似たものがあった。

 高校時代、口元に何故か力が入り、口元が歪むことを自覚する・指摘されることが多くあった。また、可笑しい表情をしている、と指摘される(症例は可笑しい表情をしていない、ただ顔に力が入ることを自覚していた)ことが高校時代、多くあった。

 大学4年次、対向してくる自動車との正面衝突というバイクの事故で、頭蓋骨骨折し、二ヶ月間、入院(外傷後健忘は四日半)。このとき、頭部CT・MRIなどを施行されたが特記すべきものなし。

(現病歴)幼少期より軽症ながら吶音(言葉が辿々しい)、発音不明瞭、小児期発症流暢障害であったが、症例はほとんど気にしないでいた。小児期発症流暢障害は高校1年次に難発性に変化し、これより小児期発症流暢障害に始めて苦しむこととなる。現代国語の時間、最初の第一語が出て来なく、登校拒否に幾度も陥った。

 高校生時代、ストレスが溜まると小児期発症流暢障害が重症化することを知る。

 理数系は極めて優秀であったが、英語が非常に成績が悪かった。理数系は全く勉強せず、英語だけ勉強していたが、英語が常に最も点数が悪かった。国語も成績は悪かった。言語系が生来的に苦手と症例は考えていた。

(匿名性に配慮、略)

 大学時代、小児期発症流暢障害に鍼、星状神経節ブロックが効くことをネットより知り、それらを受けてきたが、とくに星状神経節ブロックには非常に強い効果があっていた。

 大学時代、社交不安障害(対人緊張)を併発する。大学時代、社交不安障害のため、留年を重ねた。

 社交不安障害と小児期発症流暢障害に悩み、本院来院。筆者が主治医となりbromazepam 20mg/日、diazepam 15mg/日、etizolam 3mg/日の処方を続けた。

 また、ベンゾジアゼピン系薬剤は上記の他に cloxazolam、flurazepam、lorazepam、clorazepate、flunitrazepam、flutoprazepam、ethyl lofrazepate、clonazepamそしてalprazolamを処方したが、ethyl lofrazepate、clonazepam、alprazolam以外は小児期発症流暢障害に良好な効能が認められた。alprazolamは抗コリン作用のためと推測されるが服用時、小児期発症流暢障害が酷く悪化した14)。ethyl lofrazepate、clonazepamは作用が弱いのか効果をほとんど感じ取ることが出来なかった。

 tandospirone citrate を処方したが小児期発症流暢障害と社交不安障害に全く効能は認められなかった。また、meprobamete35) を処方したが小児期発症流暢障害と社交不安障害に僅かに効能が認められたのみであった。

 症例の希望より、極短期間の処方で、抗てんかん薬であるphenytoin、 sodium valproate、筋弛緩剤であるeperisone を処方したが、全て小児期発症流暢障害および社交不安障害に効能は全く認められなかった。

 大学卒業後は大学時代に自分で勉強していたプログラマーとして就職。プログラマーは家で一人で出来ると考えていたが、会社で行わねばならないことに症例は落胆した。プログラマーという職業であるため話すことは少なかったが、社交不安障害があった。対人緊張を緩和するため、ベンゾジアゼピン系薬剤の大量服用せざるを得なかった。休みの日はベンゾジアゼピン系薬剤を服用しないようにしていた。また、それ故に会社とアパートの往復という生活であった。症例は休みの日は会社での仕事と関係なく、自分自身で造っているソフト制作に熱中していたことも自閉的な生活を行っていた理由と言える。 

 ベンゾジアゼピン系薬剤を電話などで話すときの直前に口腔咽頭内溶解して症例は用いている。口腔咽頭粘膜から吸収させると肝臓を通らず脳に直接行くため早く、しかも良く効くと症例は主張する。  

 症例はベンゾジアゼピン系薬剤を電話などで話さなければいけないときの直前に口腔咽頭内溶解して症例は用いている。口腔咽頭粘膜から吸収させると肝臓を通らず脳に直接行くため早く、しかも良く効くと症例は主張している。 

 小児期発症流暢障害にはベンゾジアゼピン系薬剤が劇的に効果があるが、社交不安障害には効果は有るながらも十分でないため、症例には社交不安障害が問題となった。

 症例は30歳時、インフルエンザに罹患し、loxoprofen sodium を10錠服用したが熱は全く下がらず、diclofenac sodiumを4錠服用し熱が和らぎ楽になるも不十分で未だ苦しく、更に1錠追加服用し十分に熱が下がり楽になった。しかし、2時間すると再び熱が上がり苦しくなり、再びdiclofenac sodiumを4錠服用し熱が和らぎ楽になるも不十分で、更に1錠追加服用し十分に熱が下がり楽になることを繰り返したことがある。このように症例は薬剤に非常に強いと自負していた。

 32歳時、会社出社前の朝に風邪薬を1袋で十分なところを、薬に極めて強いという考えの下、6袋ほど服用して会社へ行く。その日、会社で昼食を取っていたとき、食事の皿を頭の前に差し出し、10分ほど、そのままにしていたというエピソードを起こす。症例は後日、そのことを言われても信じ難く、複数の人に問うたが、確かにそのことが有ったと同意見であった。会社の社長から、大学生時代の交通事故の後遺症だろうと検査を受けさせられたが、頭部MRI、脳波、知能などに特記すべきものはなく、記銘力に強い障害が見られたのみであった。症例のプログラマーとしての能力は極めて高く、とくに社長からは非常に大事にされていた。    

 社交不安障害に効く可能性を考え buspirone を個人輸入し服用したが、社交不安障害に効果は弱く、効果を得ようと服用量が大量であったのか、意識変容を多数回起こした。

 抗精神病薬であるrisperidone21)、olanzapine22)、haloperidol、sulpiride、そして抗てんかん薬のcarbamazepine15,16,34)を社交不安障害に効くことを期待し個人輸入して服用したが、副作用のみで効果を感じ取ることは出来なかった。risperidone 1mg服用で全身倦怠感激しく、会社のソファーで3時間ほど横になり、そのまま帰ったことがある。sulpiride 200mg服用の時も全身倦怠感強く、仕事することが困難であった。carbamazepineは“ふらつき”が酷かった。

 とくにolanzapine服用中、車運転中に発作を起こす。1歳の子供を助手席に乗せたまま車運転中、突然、意識消失し、車は道の端に停まり、寝ていたらしい。症例はF1の熱烈なファンであり、仕事中にバックグラウンドとしてF1のレースビデオを流しているほどだった。テレビはF1以外は見ていない年月が15年は過ぎていた。そのためマニュアルトランスミッションを非常に好み、マニュアルトランスミッションの車であり、4速あるいは5速にギアが入ったまま車道の端に擦れるようにして止まったのかも知れないし、発作が起こるとともにニュートラルへ無意識に入れたのかも知れない。olanzapineはてんかん発作閾値を低下させる作用が強いと症例は考えた。  

 症例の車は傷だらけであり、症例は車の傷に無頓着であったが、車は破損はもちろん、傷もほとんどなかったらしい。交通違反の処分は全く無かったため、子供がベビーチェアで泣いている処に警察官が来たらしいと後で考えた。 

 警察官より脳外科病院へ搬送されたらしい。症例は脳外科病院へ搬送されたまでのことが全く記憶にない。 病院へ着いた時点で意識を回復しているが、意識はボンヤリとしており、病院で頭部MRIを撮影され、異常なしとされ、すぐ近くの家に歩いて帰っているが、病院内の出来事は部分的な記憶があるだけである。

 車運転中、突然に意識を無くしている。前兆なしに突然、意識を失っていることより、昼食中のエピソードと同じである。 

 症例はSSRIsが社交不安障害に効くとネットで読みSSRIsの処方を懇願する。fluvoxamine 150mg/日(眠前1時間前に服用)の処方を始める。

  fluvoxamine を始めて服用した翌朝、激しい全身倦怠感のため起床できないことに気付く。 

 激しい副作用にも拘わらず、症例は社交不安障害を癒したい一心でfluvoxamine 150mg/日を眠前1時間前に服用続ける。副作用が強い=良く効く、副作用が弱い=弱く効くのみ、と症例はネットの情報より考えていた。

 しかし、その激しい全身倦怠感は午前中だけであり、午後には調子良くなり、夜間は絶好調となり、午前三時までパソコンに向かうという日々が始まる。

 アパートから会社まで自転車で数分であったため、社員が仕事はDVDに収めて持ってくる。症例はソフト開発の最高責任者であった。

 症例は、この激しい全身倦怠感を筆者には言わず、服用続けた。それほど症例は社交不安障害に悩んでいた。全身倦怠感はfluvoxamine の服用開始時に最も強く、次第に軽くなっていった。fluvoxamine 服用5ヶ月後、ベンゾジアゼピン系薬剤を服用せずに電話で話すことの出来る自分に気付いて驚く。

 症例は社交不安障害を治したい一心で更に服用を続け、ほぼ10ヶ月後、小児期発症流暢障害は寛解となる。小児期発症流暢障害と異なり、強く悩んでいた社交不安障害にはほとんど効果はなかったが、社交不安障害を癒したいため強い副作用にも拘わらず服用を続ける。1年半後、fluvoxamine は社交不安障害に全く効かないので服用を中止したいと言うため、処方は中止する。

 この後、数年間、個人輸入しfluoxetineを比較的大量服用した。このときの全身倦怠感は僅かであった。これも社交不安障害を癒したい一心で服用続けたが、社交不安障害に効果は感じられなかった。また、moclobemideを個人輸入し社交不安障害を治したい一心で4年間ほど比較的大量服用したが効果は感じられなかった。このときも副作用は少なかった。

 症例自身、“場の空気が読めない、人の心が分からない、病的な凝り性、手先および身体運動の病的な不器用、対人関係の病的な不器用、人の目を見て話すことが出来ない”であり、典型的なAutism Spectrum Disorder であると主張する。実際、症例は“人の目を見て話すこと”は全く出来ない。

 

【考察】

 症例はある種のてんかんを持っているため、ベンゾジアゼピン系薬剤が小児期発症流暢障害に奏功する可能性が考えられる。

 てんかんと小児期発症流暢障害の関連性を示唆する文献は見出されなかった。ただ、抗てんかん薬の levetiracetam が小児期発症流暢障害と部分てんかんの併発例に効能があることを記された論文37)が存在するが、症例はこれに該当する可能性が強いと考えられる。

 アメリカでは小児期発症流暢障害に対し、脳外科的手術が行われている。大脳基底核の器質的機能的障害が小児期発症流暢障害の根幹と考えられるからである4,13)

 最近は迷走神経刺激によりてんかん発作が起こり難くなるとの考えの下、迷走神経刺激療法の手術も行われている38)。症例の小児期発症流暢障害に鍼・星状神経節ブロックおよびベンゾジアゼピン系薬剤が奏功するのは、この機序かも知れない。

 ベンゾジアゼピン系薬剤はその依存性から欧米では麻薬扱いに近く、処方箋なしに所持していると逮捕されることもある。欧米では昔より小児期発症流暢障害の研究は非常に盛んであるが、ベンゾジアゼピン系薬剤の小児期発症流暢障害への効能を示す論文が見出されないのは、このための可能性も考えられる。  

 欧米でもベンゾジアゼピン系薬剤であるがalprazolam、clonazepamは頻繁に処方される。しかし、alprazolamは抗コリン作用を有し、服用直後は症例のように却って小児期発症流暢障害が重症化する14)。また、症例はclonazepamを服用したこともあるが、効果を感じることが出来なかった。

 抗てんかん薬であるclonazepam は古くから使用されているベンゾジアゼピン系薬剤であり、欧米でも比較的頻繁に処方される。そのためclonazepam の社交不安障害やパニック障害への効能を示す論文10,11,27,33)は散見されるが、小児期発症流暢障害への効能を示す論文は見出されない。

 同じく抗てんかん薬であるclobazamは比較的最近、発売されたベンゾジアゼピン系薬剤であるが、これも小児期発症流暢障害への効能を示す論文は見出されない。

 pagoclone が小児期発症流暢障害に効能があると注目されたが、ベンゾジアゼピン系薬剤に近い薬理作用を有しており、依存性が懸念され発売されていない17,24)

 症例のようにベンゾジアゼピン系薬剤が小児期発症流暢障害に劇的効能があるのは少数なのか、多数存在するのか、欧米ではベンゾジアゼピン系薬剤が麻薬扱いに近く、alprazolam、clonazepam以外は処方されることは少ないため、判断が難しい。

 SSRIsであるfluoxetine3)paroxetine 5,7)sertoraline6,9)を用いて小児期発症流暢障害を治療した報告が存在する。しかし、sertoralineは流暢障害を起こすという論文8,21)も存在する。

 

【結語】

 部分てんかんに効能があるとされ、小児期発症流暢障害に効果があるという論文が散見されるcarbamazepine 15,16,34)を服用しても症例には全く効果がない。

 carbamazepineとベンゾジアゼピン系薬剤の作用機序は異なる。

 症例が小児期発症流暢障害に効能があると言うベンゾジアゼピン系薬剤は部分てんかんに効能がある薬剤である。

 小児期発症流暢障害とは脳波に異常が現れない大脳基底核30)を起点とする部分発作重延状態またはそれに近似するものと定義することも可能と思われる。

 また、小児期発症流暢障害はストレスで重症化することが多く、脳波異常はないため、心因性非てんかん発作またはそれに近似するものである可能性も捨てることは出来ない。

 

----これは調査・研究上の倫理的原則に則った発表である----

 

【文献】 

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A case of autism spectrum disorder in which benzodiazepine derivatives are effective in childhood-onset fluency disorder