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研究報告   

 

ベンゾジアゼピン系薬剤が奏功しSSRIs(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)により小児期発症流暢障害が寛解した一例                    

 

 

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抄録:ベンゾジアゼピン系薬剤が小児期発症流暢障害に奏功する症例を経験した。症例は幼少期より軽症ながら構音障害があった。症例は高校時代が終わる直前、対人緊張を発症。対人緊張に悩み、本院来院してからはベンゾジアゼピン系薬剤の比較的多量処方を行ってきた。そして偶発的にベンゾジアゼピン系抗不安薬が小児期発症流暢障害に奏効していた。

 この症例のようにベンゾジアゼピン系薬剤が小児期発症流暢障害に強い効能を示す症例が潜在的に多く存在している可能性が考えられる。 

 症例は最終的にSSRIsselective serotonin reuptake inhibitors)により小児期発症流暢障害が寛解したが、このようにSSRIsにより小児期発症流暢障害が寛解する症例は多数存在すると思われる。

 

Abstract: I experienced a case in which benzodiazepines responded to childhood-onset fluency disorders. The case had a mild but dysarthria since childhood. The case developed interpersonal tension just before the end of his high school years. He was suffering from interpersonal tension and had been prescribed a relatively high dose of benzodiazepines since he came to our hospital. And incidentally, benzodiazepines had responded to the benzodiazepines for childhood-onset fluency disorder.

There are potentially many cases in which benzodiazepines have a strong effect on childhood-onset fluency disorder, as in this case. 

Although the patient's childhood-onset fluency disorder was eventually remitted by selective serotonin reuptake inhibitors (SSRIs), there may be many cases of childhood-onset fluency disorder remission by SSRIs.

 

 

key words

childhood-onset fluency disorder,  benzodiazepine derivatives, selective serotonin reuptake inhibitors,  partial epilepsy

 

 

. はじめに

 小児期発症流暢障害は欧米では以前より重大な疾患として盛んに研究されてきた。家族集積性が高いことより、遺伝性の疾患と見做されてきた。小児期発症流暢障害は3歳から6歳までに発症し、幼少時期では5%に観察されるが、成人では1%に観察される。このように成人になるまでに寛解する例が多いことからも部分てんかんに類するものである可能性が考えられる。また、小児期以降は男性が女性より四倍多いとされる。正常平均と比べ、親が小児期発症流暢障害の場合、子が小児期発症流暢障害を罹患する確率は三倍多いとされる12)

 脳梗塞または極めて激しい頭部打撲などに依って成人に流暢障害が起こることもある13)

 現在は、家系内多発例の研究より小児期発症流暢障害の遺伝子座の探索は急速に進んでいる。小児期発症流暢障害の遺伝子座は多くが発見されており、小児期発症流暢障害は多数の因子が原因となる一つの症候群とされる12)

 症例は小児期発症流暢障害に鍼・星状神経節ブロック療法が奏功していた。これは症例の小児期発症流暢障害が交感神経過剰緊張であることを示唆する。こういう例もかなりの確率で含まれると考えられる。

 

 

. 症例

(症例)46歳、男性、右利き(父・母・姉も右利き)

(家族歴)親兄姉及び近親に小児期発症流暢障害および、てんかんはない。

 父は高校時代、学校に行かず遊び歩くため、極めて厳格であった祖父より大学病院精神科に連れて行かれ、人格障害と診断された(投薬はなし)。

 しかし、父も極めて強い凝り性であり、自閉症スペクトラム障害であった可能性が強い。なお、父は母には厳しかったが、子供には非常に優しく症例は一度も父から怒られた記憶はない。

 父にも症例のような病的な暑がりがあった。父も短距離走が速かった。

(性格)強い凝り性、神経質、優しい、素直、お人好し、努力家。

(既往歴)特記すべきものなし

(現病歴・生活歴)父25歳時、母24歳の子供であり、周産期に特記すべき事項はない。熱性けいれんなど乳児期・幼児期のてんかんのことは親や親戚から言われたことがない。

 父が賭け事などに熱中して働かず、母が一人で仕事して家計を賄い、この家庭不和によるストレスが症例に掛かっていた可能性が考えられる。 

 幼稚園の頃まで、非常に泣き虫で、毎日とくに夕方になると理由もなく数時間も泣き続けることがあった。また、幼稚園時、幼稚園のバスから降ろされてバス停から家までの極短い距離を歩くことが出来ず、いつもバス停で泣いていた。幼稚園は一年しか通ってないが、症例が登園を非常に嫌がったためと、風疹などが非常に長引き、十数回程、登園したのみである。幼稚園の時、女子から話し掛けられたが喋れず、流暢障害を揶揄されたらしいことがある。

 発育は早く、小学校入学時、背の高さはクラスで一番高い方から2番目だった。

 小学生になると全く泣かなくなり、家から学校まで走って(小学1年生で15分ほど)登下校するようになる。対人関係は苦手だった。小学1年の頃まで親しい友人は一人も居なかった。小学2年次、親同士の仲介で同級生の友人が出来、学校が終わると毎日のように一緒に遊ぶようになった。その友人は極めて穏やかな性格であった。

 小学生時代より“き”と“ち”の区別が付かないなど多少の構音障害が有った。現在も続いていると言うが、例えば“地球”の発音の仕方が分からなかった。症例は今でも発音不明瞭な処があり、電話など非常に苦手である。

 小学校低学年時、授業の時“あのね”を最初に付ける癖が続いており、教師より、それを指摘されることが多かったが、なかなか改善されず、それが改善されたのは小学4年次と記憶する。“あのね”を最初に付けると発言し易かったらしい。  

 田舎であったためか、算数(数学)が極めて優秀であったためか、苛めを受けたことはない。

「夕方、頭がボーッとして現実感が薄くなること」および「夕食時、ボンヤリとして数分間から十分間ほど、箸が止まること」が小学校低学年次、しばしば起こっていた。これらの発作は小学4年次か5年次を最後に起こらなくなった。

 運動時、力を巧く抜くことが出来ず、そのため運動は苦手であった。小学3年次、走り方がぎこちないと揶揄され「ドッチンバッタン」とその走り方より、あだ名を付けられた。  

 鍛錬は何もしていないが、小学3年次に上腕筋の力こぶが出来ることを知る。体脂肪が非常に少ないため、力こぶが目立ったとも考えられる。

 驚きの反応が普通の人より非常に強い16)と小学生時より言われていた。頭囲が大きかった。また、恐がりで、小学生時は夜、トイレに行くことが非常に怖かった。涜神恐怖が小学生時より強く有った。  

 小学4年次、腹筋が非常に強く張っており、強く腹部を叩かれても大丈夫であることに気づく。また、誰もが出来る腹筋運動をほとんど出来ないことに気づく。

 小学4年5年次、走るときに顔を酷く歪めて可笑しいと話題になった。

 発育が早く、身長の伸びは中学1年初めでほぼ終わり、中学1年次には50m走が学年で一番速くなった時期もある。短距離走は速かったが長距離走は苦手だった。

 中学時代、数回、親しい友人より連発性流暢障害を揶揄されるが、親しい友人であり余り気にしなかった。中学2年次、睡眠麻痺が時折起こっていた。   

 高校1年次に最初の一語が出て来ないことに始めて気付く。連発性が難発性に変化したと推測される。これより流暢障害に非常に苦しむこととなる。9月、国語の授業中、最初の第一語が出て来なく、国語の授業の前に早退することを頻繁に行い、また登校拒否に幾度も陥った。

 高校時代、ストレスが溜まると流暢障害が重症化することを知る。

 理数系は極めて優秀であったが、英語が非常に成績が悪かった。理数系は全く勉強せず、英語のみ勉強していたが、英語が常に最も点数が悪かった。国語も成績は悪かった。言語系が生来的に苦手と症例は考えていた。英語の発音が可笑しいと中学時代より話題になっていた。高校時代、皮肉や嫌味が分からないと良く言われた。

 大学時代前半・中学時代にもあったらしいが、口元に何故か力が入り、口元が歪むことを自覚する・指摘されることが特に高校時代、多く有った。また、症例はただ顔に力が入ることを自覚していただけであるが、可笑しい表情をしている、と指摘されることが特に高校時代、多く有った。

 高校3年の終わり頃、対人緊張を発症。二次試験の時、異常に緊張して志望校であったT大学に落ちる。対人緊張のため、予備校は2ヶ月で辞めて地元に戻ってくる。そして宅浪をした。一浪して志望を大きく落とし地元の旧帝国大学へ入学する。

 大学時代、英語の授業中、英文を読むように当てられ、英文を流暢障害のため、辿々しくしか読めず、恥ずかしい思いをしたことがある。

 また、大学時代、対人緊張のため、人が混む授業に出るのが非常に困難であり、留年を重ねた。

 対人緊張のため大学時代、友人がほとんど出来なかった。

 大学時代後半、流暢障害に鍼、星状神経節ブロックが効くことをネットより知り、それらを受けてきた。とくに星状神経節ブロックには流暢障害、対人緊張ともに非常に強い効果があった。

 大学4年次、これ以上、留年すると放校という年、対向してくる自動車との正面衝突というバイクの事故で、頭蓋骨骨折し、二ヶ月間入院(外傷後健忘は四日半)。このとき、頭部MRIを施行されたが特記すべきものなし。

 この事故の後、対人緊張に悩み、本院来院。筆者が主治医となりベンゾジアゼピン系薬剤の投与を始める。cloxazolam,  flurazepam,  lorazepam,  clorazepate,  flunitrazepam,  flutoprazepam,  ethyl lofrazepate,  clonazepam,  alprazolam などを処方したが、ethyl lofrazepate,  clonazepam,  alprazolam以外は流暢障害に良好な効能が認められた。alprazolamは抗コリン作用のためと推測されるが服用時、流暢障害が酷く悪化した8)ethyl lofrazepate,  clonazepam は作用が弱いのか効果をほとんど感じ取ることが出来なかった。

 amitriptyline を処方したが、1錠服用すると24時間眠り続け、三日ほど、流暢障害が激しく重症化し、服用は1回で終わる。

 様々な模索の結果、bromazepam 20mg/,  diazepam 15mg/,  etizolam 3mg/,   flunitrazepam 2mg/日の処方に落ち着く。

 流暢障害にはベンゾジアゼピン系薬剤が劇的に効果があるが、対人緊張には効果はあるながらも十分でないため、対人緊張が問題となった。

 大学卒業後は、大学時代に自分で勉強していたプログラマーとして就職する。プログラマーは家で一人で出来ると考えていたが、会社で行わねばならないことに症例は落胆した。プログラマーという職業であるため話すことは少なかったが、対人緊張があった。対人緊張を緩和するため、ベンゾジアゼピン系薬剤を多量服用せざるを得なかった。休みの日はベンゾジアゼピン系薬剤を服用しないようにしていた。また、それ故に会社とアパートの往復という生活であった。症例は休みの日は会社での仕事と関係なく、自分自身で造っているソフト制作に熱中していたことも自閉的な生活を行っていた理由と言える。

 ベンゾジアゼピン系薬剤を電話などで話すときの直前に口腔咽頭内溶解して症例は用いていた。口腔咽頭粘膜から吸収させると肝臓を通らず脳に直接行くため早く、しかも良く効くと症例は主張した。   

 症例は交感神経を刺激することを行ったとき、すなわち、会社に着いたとき、昼食を食べたとき、風呂に入ったとき、などの40分ほどは非常に暑がる。褐色細胞腫を疑い病院へ行き血液検査したが「ドーパミンなどは少しも上昇していない、交感神経が非常に敏感と考えられる、褐色細胞腫ではない」と言われる。この病的な暑がりは小学生の頃は余り記憶になく、中学または高校次より顕著になったと記憶する。

 症例は32歳時、インフルエンザに罹患し、loxoprofen sodium を10錠服用したが熱は全く下がらず、diclofenac sodiumを4錠服用し熱が和らぎ楽になるも不十分で未だ苦しく、更に1錠追加服用し十分に熱が下がり楽になった。しかし、2時間すると再び熱が上がり苦しくなり、再びdiclofenac sodiumを4錠服用し熱が和らぎ楽になるも不十分で、更に1錠追加服用し十分に熱が下がり楽になることを繰り返したことがある。このように症例は薬剤に非常に強いと自負していた。(この年のインフルエンザは非常に強い症状が出るインフルエンザであった)

 32歳時、会社出社前の朝に風邪薬を1袋で十分なところを、薬に極めて強いという考えの下、6袋ほど服用して会社へ行く。その日、会社で昼食を取っていたとき、食事の皿を頭の前に差し出し、10分ほど、そのままにしていたというエピソードを起こす。症例は後日、そのことを言われても信じ難く、複数の人に問うたが、確かにそのことが有ったと同意見であった。会社の社長から、大学生時代の交通事故の後遺症だろうと検査を受けさせられたが、頭部MRI、脳波、知能などに特記すべきものはなく、記銘力に強い障害が見られたのみであった。症例のプログラマーとしての能力は極めて高く、とくに社長からは非常に大事にされていた。    

 risperidone,  olanzapineが対人緊張に効くとネットにあったと主張するため処方したが、副作用のみで対人緊張、流暢障害に効果はなかった。会社勤務の日、risperidone 1mg服用で全身倦怠感激しく、ソファーで2時間ほど横になり、そのまま帰ったことがある。

 全身倦怠感・眠気がほとんど来ないため服用量が多すぎたのだろうと言うが、olanzapine服用中、車運転中に発作を起こす。1歳の子供を助手席に乗せたまま車運転中、突然、意識消失し、車は道の端に停まり、寝ていたらしい。症例はF1の熱烈なファンであり、仕事中にバックグラウンドミュージックとしてF1のレースビデオを流しているほどだった。テレビはF1以外は見ていない年月が13年は過ぎていた。そのためマニュアルトランスミッションを非常に好み、マニュアルトランスミッションの車であり、発作が起こるとともにニュートラルへ無意識に入れたのかも知れない。しかし、前兆があり、車を車道の端に停め、発作による健忘を起こして前兆の記憶がない可能性が最も高いと考えられた。

 車は破損はもちろん、傷もなかったらしい。交通違反の処分は全くなかった。子供がベビーチェアで泣いている処に警察官が来たらしいと後で考えた。 

 警察官より脳外科病院へ搬送されたらしい。症例は脳外科病院へ搬送されたまでのことが全く記憶にない。病院へ着いた時点で意識を回復しているが、意識は朦朧としており、病院で頭部MRIを撮影され、異常なしとされた。病院内の出来事は部分的な記憶がある。

 前兆の記憶がないことより、昼食中のエピソードと同じである。

 症例は対人緊張を癒したい一心でネットで詳しく調べ、 SSRIsが対人緊張に効くことを知り、強く SSRIsの処方を希望する。 paroxetine 2,11),  sertraline6) など様々な SSRIsを処方したが、対人緊張に効果はなかった。しかし、この間に流暢障害が寛解していることを知る。症例は流暢障害には悩んで居らず、どの薬剤が流暢障害を寛解に導いたのか分からない。症例は対人緊張に強く悩んでおり、流暢障害はベンゾジアゼピン系薬剤が奏効するためほとんど悩んで居らず、 流暢障害寛解にほとんど喜ばなかった。

 症例自身、“場の空気が読めない、人の心が分からない、病的な凝り性、手先および身体運動の病的な不器用、対人関係の病的な不器用、人の目を見て話すことが出来ない”であり、典型的なAutism Spectrum Disorder であると主張する(筆者から見てもAutism Spectrum Disorderで間違いないと思われる)。

 

  

.   考察

 症例はAutism Spectrum Disorderであったため、ストレス耐性が低く、幼い頃より不安障害であり筋肉の緊張が異常に強く、これにより構音障害、腹筋運動が出来ない、走り方がぎこちないなどの症状が表れていたとも推測される。しかし、症例の幼少時代は家庭が極めて貧乏であり、家庭不和極めて激しく、毎日のように父と母が喧嘩しており、そのストレス故に腹筋などが硬かった可能性も考えられる。

 症例は今でも“き”と“ち”の区別が付かず、“地球”をキーボードでタイプするとき分からない。

 症例はある種のてんかんを持っているため、ベンゾジアゼピン系薬剤が流暢障害に奏功する可能性が考えられる。しかし、不安障害に依る強い筋緊張がベンゾジアゼピン系薬剤により解されるため流暢障害に奏功する機序も考えられる。

 てんかんと流暢障害の関連性を示唆する文献は見出されなかった。ただ、抗てんかん薬の levetiracetam が流暢障害と部分てんかんの併発例に効能があることを記された論文14)が存在するが、症例はこれに該当する可能性も考えられる。

 アメリカでは流暢障害に対し、脳外科的手術が行われている。大脳基底核の器質的機能的障害が流暢障害の根幹と考えられるからである7)

 最近は迷走神経刺激に依りてんかん発作が起こり難くなるため、迷走神経刺激療法の手術も頻繁に行われている15)。症例の流暢障害に鍼・星状神経節ブロックおよびベンゾジアゼピン系薬剤が奏功するのは、この機序の可能性も考えられる。

 ベンゾジアゼピン系薬剤はその依存性から欧米では一般に準麻薬扱いに近く、処方箋なしに所持していると逮捕されることもある。欧米では昔より流暢障害の研究は非常に盛んであるが、ベンゾジアゼピン系薬剤の流暢障害への効能を示す論文が見出されないのは、このための可能性も考えられる。    

 欧米でもベンゾジアゼピン系薬剤であるがalprazolam,  clonazepamは頻繁に処方される。しかし、alprazolamは抗コリン作用を有し、筆者の知る限り多くの小児期発症流暢障害者は症例のように流暢障害が強く重症化する8)。また、症例はclonazepamを服用したこともあるが、効果を感じることが出来なかった。欧米ではベンゾジアゼピン系薬剤としては依存性が弱いとalprazolamが最も頻用されるため、ベンゾジアゼピン系薬剤は流暢障害を重症化させると認識されていると考えられる。

 抗てんかん薬であるclonazepam は古くから使用されているベンゾジアゼピン系薬剤であり、欧米でも比較的頻繁に処方される。しかし、流暢障害への効能を示す報告は見出されない。 また、症例もclonazepamには吃音への効果を感じなかったと言う。

 同じく抗てんかん薬であるclobazamは比較的最近、発売されたベンゾジアゼピン系薬剤であるが、これも流暢障害への効能を示す報告は見出されない。

 症例のようにベンゾジアゼピン系薬剤が流暢障害に劇的効能があるのは少数なのか、多数存在するのか、欧米ではベンゾジアゼピン系薬剤が準麻薬扱いに近く、依存性が少ないとされるalprazolam,  clonazepam以外は処方されることは少ない。また、特にその抗コリン作用のため流暢障害を一時的にせよ激しく悪化させるalprazolamのため、ベンゾジアゼピン系薬剤は流暢障害を悪化させると思われているとも考えられる。      

 SSRIsであるfluoxetine 9),  paroxetine 2,4,11),  sertraline 3,6) に依り流暢障害が軽症化した報告が存在する。これらは全て服用中のみの効果であり、服用を中止すると流暢障害は再燃している。

 症例は幾種類ものSSRIsを服用続けていたときに、どの薬剤が奏功したのかが全く分からないと言うが流暢障害が完全寛解している。

 

 

COI:開示すべきCOI はない。

 

 

 

               文献 

1) American Psychiatric Association : Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 5th edition(DSM-5), APP, Arlington VA, 2013.(日本精神神経学会日本語版用語監修、高橋三郎, 大野祐監訳:DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル, 医学書院, 東京, 2014.)

2) Boldrini,M., Rossi,M., Placidi,G.F. : Paroxetine efficacy in stuttering treatment. Int J Neuropsychopharmacol  6(3) : 311-312, 2003.

3) Brewerton,T.D., Markowitz,J.S., Keller,S.G. : Stuttering with sertraline. J Clin Psychiatry 57(2) : 90-91, 1996.

4) Busan,P., Battaglini,P.P., Borelli,M. et al : Investigating the efficacy of paroxetine in developmental stuttering. Clin Neuropharmacol  32(4) : 183-188, 2009.

5) Christensen,R.C.,  Byerly,M.J.,  McElroy,R.A.: A case of sertraline-induced stuttering.  J Clin Psychopharmacol  16(1) : 92-93, 1996.

6) Costa,D., Kroll,R. : Sertraline in stuttering. J Clin Psychopharmacol  15: 443-444, 1995.

7) Edgar,D., Alexander,G.W., Leveque,M.:  Psychosurgery for stuttering, Neuropsychiatr Dis Treat 11: 963–965, 2015.

8) Elliott,R.L., Thomas,B.J.: A case  report of  alprazolam-induced stuttering. Clin  Psychopharmacol 5159-160, 1985.

9) Kumar,A., Balan,S.: Fluoxetine for persistent developmental stuttering. Clin Neuropharmacol 30 : 58-59, 2007.

10) McCall,W.V.: Sertraline-induced stuttering. J Clin Psychiatry  55(7):316,1994. 

11) Murray,M.G., Newman,R.M.: Paroxetine for treatment of obssesive-compulsive disorder and comorbid stutteringAm J Psychiatry  71037, 1997.

12) Raza,M.H., Gertz,E.M., Mundorff,J. et al : Linkage analysis of a large African family segregating stuttering suggests polygenic inheritance.

Hum Genet 132(4):385-396, 2013.

13) Sahin,H.A.,Krespi,Y.,Yilma,Z. et al: Stuttering due to ischemic stroke.  Behav Neurol 1637-39, 2005.

14) Sechi,G.,Cocco,G.A.,D'Onofrio,M. et al: Disfluent speech in patients with partial epilepsy: beneficial effect of levetiracetam. Epilepsy Behav  9(3):521-523, 2006.

15) 下川能史,森岡隆人,佐山徹郎ほか:難治性てんかんに対する迷走神経刺激療法の手術合併症:26例の経験から、 Neurological Surgery  42 5 : 419-428, 2014.

16) 高橋秀俊,石飛信,原口英之ほか:自閉症スペクトラム障害児における聴覚性驚愕反射の特性とエンドフェノタイプ候補可能性の検討. 日本生物学的精神医学会誌26(2) :103-108, 2015.

  

 

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A case of autism spectrum disorder in which benzodiazepine derivatives are effective in childhood-onset fluency disorder.